3.新商品のスタートライン

メモピット

このままだと可能性がない。新しい付加価値が必要だ

「無名の会社が作った商品だ、そのうち存在が知られればHITするかも」そんな根拠のない僕の予想を裏切り、「オーキッス」がブレイクすることはなかった。
さらに、市販品を世に出すことの大変さを甘く見過ぎていた。
「ディスプレイ用の什器が壊れてしまった」
「店頭に商品が並んでいない」
そんなお店やお客様からの問い合わせにも、細かく対応する人手がなかった。
「オーキッス」を扱うお店は徐々に減っていった。僕には全てのことが初めてだった。
僕にはあまりにも経験が足りなすぎた。

このままだと、この商品に売れる可能性がないことを僕は理解しはじめていた。
でも、何か付加価値を付ければ、この商品は生き返るんじゃないか、とも考えていた。
そして…あることに気づいた。ネット上のバナー広告がヒントになった。
「オーキッス」に企業名や電話番号を印刷して、パソコンのフレームに貼れば、バナー広告のようにPRできる。 メモを貼る以外に“企業のPRができる”付加価値が「オーキッス」にはある。以前、いくつかの広告代理店から「オーキッスに企業名を入れられないか?」という問い合わせがあったことも思い出した。

1999年から累計1000万セット販売のメモピット

1999年春、国内最大級のノベルティ展示会「プレミアムインセンティブショー」で“企業名や連絡先が入れられる”新たな価値を持った「オーキッス」を宣伝した。
たくさんの見積もり依頼を頂き、数カ月後には次々と契約が決まっていった。
その後、形状をそれまでのボタン型からシート型に変更した。これにより、何度も繰り返し、メモを貼ってはがせる新たな価値が生まれた。ボタン型よりもシート型の方が高い広告効果を発揮するという点も受けた。ネーミングもより分かりやすい「メモピット」に変更した。

「オーキッス」を原型にした「メモピット」は時間をかけて企業の宣伝担当者に認知されるようになり、1999年から数えて10年目の2008年、累計約1000万セットが世に出た。そして、2007年春、「メモピット」は、伊東屋・ロフト・東急ハンズなどのお店で販売されることになった。いきなりではないけれど、少しずつ売れるようになってきた。

視点を変えると、名前も形も変わったけれど、「オーキッス」が長い年月を経て、本当の意味でやっとスタートラインに立ったと言えるのかもしれない。
さぁ、どうなるだろう? 期待と不安が交じった気持ちは、あの頃とちっとも変わっていない。

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