3.スタートライン

今日の時間管理の市場は存在していた
しかし、僕がいくら決心を固めたからといって現実はそう甘くない。テンミニッツを発売するまでには、いくつかのハードルが待ち構えている。
まず、一つ目のハードル。
それはテンミニッツ発売前の「モニター体験者募集」を告知した時の反響だ。
もちろん、モニター募集は、体験者の意見を今後の商品開発に活かすために行うわけだが、違う視点で見ると、その商品に対する市場の興味度を測る指標とも言える。
最低限、モニター募集で申し込み数が少ない商品は、どこかを大きく方向転換し、改善しなければ、市場に出した時に売れない可能性が高いだろう。
テンミニッツは、これまでのどんな商品にも似ていない商品だ。それをネットに掲載した募集記事を読んだだけできちんと理解されるだろうか、という懸念もあった。
蓋を開けてみると、定員100名のモニター募集の定員がネットを通してわずかなPRをしただけであっという間に埋まった。テンミニッツがテーマにする“今日の時間管理”に多くの方が興味を持っていることが分かった。モニター後のアンケートを見ても、いかに多くの方が“今日の時間管理”にストレスを感じ、手こずっているかが読み取れた。

メーカーの運命を占うバイヤーとの交渉
次のハードルは、我々メーカーにとって、まさに運命を占う瞬間と言ってもいい。それは販売店のバイヤーにテンミニッツを実際に見ていただき、店舗での取り扱いを交渉する場だ。
テンミニッツは、まず、東急ハンズのバイヤーに見ていただくことにした。ハンズといえば、言わずと知れた人気商品やブームを生み出すきっかけとなる注目度の高いSHOP。そのバイヤーと言えば、何が売れ、何が売れないかを熟知しているエキスパート。そのバイヤーの評価が低かったら…たとえ他のSHOPで取り扱ってもらえたとしても、苦戦を強いられることは必至だろう。
渋谷にある東急ハンズの本部を訪ね、担当者にテンミニッツのコンセプトをお話すると、担当者自身が“今日の時間管理”に苦労されていたこともあり、また、手帳と組み合わせて販売するのにうってつけのアイテムということで好評価をいただいた。
その場で手帳売り場での販売が決定し、さらに渋谷店では、テンミニッツの専用コーナーまで設けていただく
ことになった。次に訪れたLOFTでも、同様の好感触をいただき、数週間後には店頭に並ぶことが決定した。
と書くと、何もかもが順風満帆のように感じられるかもしれないが、決してそうではない。やはり、これまで なかった市場をつくるというのは並み大抵のことではない。組織力のある大手でも難しいことを、僕らはベンチャーの限られた資力で成し遂げなければならない。それは、もしかすると、商品づくり以上の困難が待って いるかもしれない。でも、常に挑戦する心を持ってなければベンチャー企業は、単なる零細企業になってしまう。アイデアを出すためにどこまでもしつこく考えること、僕らの武器は、これしかない。